Mattox, George & Toledo-Piza, Mônica & Oyakawa, Osvaldo & Armbruster, J.. 2006. ”Taxonomic Study of Hoplias Aimara (Valenciennes, 1846) and Hoplias macrophthalmus (Pellegrin, 1907) (Ostariophysi, Characiformes, Erythrinidae).” Copeia. 516-528.
本ブログのヘッダー画像の引用元の論文である。
画像は南米中北部の地図。やや見づらいが、●はHoplias aimaraの分布、■はHoplias aimaraとHoplias macrophthalmusのタイプ産地(種が記載される場合の基準となるタイプ標本が発見された地域のこと)を表している。細部を端折ってまとめれば、本論分では、従来アクアリウム業界名で「リアルタライロン」とされてきた2種が同種であることが示されている。
まずHopliasとは、ネオンテトラ等が属するカラシン目 (Characiformes)の、 エリュトリヌス科 (Erythrinidae)の属名である(ほかに、Erythrinus属、Hoplerythrinus属がある)。便利な系統図がWikipediaにあった(Betancur-Rodriguez et al. 2017 and Nelson, Grande & Wilson 2016に基づく)。
※中央やや上。あまり適当なことは言えないが、George et al.(2006, 516)では、 Valenciennes(1846)が Hoplias aimaraを記したことになっているが、Fish baseでは (Valenciennes, 1847)となっているのはどうしてだろうか。有識者の方、ご教授願います。
Oyakawa(2009)によれば、9種がHoplias属に属するようだ。
さて、問題のHopliasだが、日本のアクアリウム業界内では(おそらくコアな)人気のある魚種である。業界名では大まかに3つに分けられる。
つまり、
・リアルタライロン(Hoplias macrophthalmus, Hoplias aimara)
・ブラックタライロン(Hoplias curupira)
・タライ―ラ(Hoplias malabaricus)
私自身、タイガーホーリーとも呼ばれることのある最後のHoplias malabaricusを一時期30cm程まで育てたことがある。(生憎、水温調整のミスで衰弱死してしまった)
さて、これら3種の分類自体にも問題はあるだろう。実際、タライロンの名を騙ったタライ―ラの販売が横行していたこともあり、本邦での関心はどちらかといえば、3種の区別にあるのかもしれない。そこら辺の事情は、最新の研究動向を参照すべし。もう時代遅れかもしれないが、マニアにとって伝説のブログも面白い。
Grande Ogawa氏のブログも参考になるだろう(最近鬼籍に入られたらしい。ご冥福をお祈りいたします)
だが、今回取り上げた論文の主旨は、リアルタライロンに分類されてきた2種が、同一種であることを指摘するものである。
まず、2種を他の近縁種から区別する特徴として、眼窩膜上に縦に伸びる暗色斑があるらしい(Geoge et al., 517)。
詳しい検証は思い切って省略させていただくが、200個体の調査の結果として、Hoplias aimara と Hoplias macrophthalmusは同じ分類群に属し、Hoplias aimaraの名称が優先されるという結論になっている。Hoplias macrophthalmusはH.aimaraのjunior synonymとみなされる(ibid., 522)。
ショッキングなのは、金採掘による水銀汚染と生物濃縮によって、仏領ギアナとスリナムのHoplias aimaraが人体に危険なレベルの水銀を含んでおり、その肉を食べる現地人に深刻な被害をもたらしているらしいということだ(ibid.)。
ガリンペイロってまだ活動してるのだろうか。それとも嬉しくない置き土産なのだろうか。調べてみる価値はありそうだ。
話があちこちに脱線してしまったが、ともかく、本ブログはこんな感じで、ど素人がど素人なりに、緩く、しかし何か有益なところもあるような仕方で、博物学的にあれこれを紹介していく予定です。非専門家で、趣味の延長なので、大目に見ていただけると助かります。何卒よしなに。